FM三重「ウィークエンドカフェ」2010年12月18日放送

今回のゲストはボランティアセンター ラブリーフォレスト代表の前出健太郎さんです。
鈴鹿にある加佐登神社の森で森林浴が楽しめるバリアフリーの道を作っています。
主に、活動は一人で行っている前出さんですが、
「僕の周りには応援してくれる人がたくさんいるんです。
いろんな人に支えてもらっていることをいつも忘れずに活動をしています。
みなさんに感謝です!」と。

■森の中にバリアフリーの道を作ろうと思ったきっかけは?

大学院で『人と森林との豊かな関わり』について研究していたのがきっかけです。
アメリカに行き、国立公園の中にボランティアが入って保全する「森林ボランティア」の活動も体験しました。
アメリカでは、車でアクセスできる森には、必ずスロープなどがあり、バリアフリーの遊歩道となっているんです。
お年寄りや子供でも安全安心で気軽に森林浴を楽しめる森・・・。
これを日本の森でも実現できないかと。

その話を知り合いにしたところ、鈴鹿加佐登神社を紹介していただき、当時の宮司さんに尋ねたところ、「やってごらん」と言われまして。
それが約8年前。
自分でもよく続いているな、と思います(笑)

■具体的にどのような作業を・・・?

鈴鹿加佐登神社の鎮守の森・・・と言っても、最初は見渡す限りの藪。
まず測量からはじめたんですが、普通測量は、邪魔な木はどんどん伐採しちゃうんですね。
でもそれだと自然との調和ではなくなってしまう。
作った道から、その木が見えるようでないと・・・との考えで、人間が通る道だけ作りながら測量しました。
足元など全然見えないものだから、崖から転がり落ちたり、アシナガバチに襲われたり・・・本当にもう命がけ(笑)
また、崩れて地形が変わっていて、地図と現実のギャップがかなりあり、苦労しました。

それでも何とか人間が通れるだけの伐採をしながら測量を終えて。
ようやく実家から重機を運んできて、削ってこまめな手直をしている状態です。
まだまだいつまでかかるかわかりません。

■作業をして8年・・・どんな気持ちですか?

今でこそ良い思い出と言えますが、最初は20人ほどいたメンバーが、気づけば僕一人に・・・。
途中までは意地で頑張ったというのがありますね。
僕自身、最初は技術もあまりなかったので、作っては崩れての繰り返しで、停滞したこともありました。

けれど、絶対諦めたくありませんでした。

開通した部分で、子供や親子連れの方たちが歩いてくれて、遊んでくれたときの嬉しさ!
「僕はこのために頑張っていたんだ!」と感動しました!

そして、何年も作業を続けていくにつれ、だんだんと気持ちがゆったりしてくるのが、自分でもわかりました。
がむしゃらに「2~3年で終わってやる」と思いながら作業していたのを過ぎると、
「時間が掛かっても良いし、崩れても直せば良い、時間をかけて頑丈に作ろう」
という思いに変わってくるんですよ。

喜んでくれた子どもたちの顔や、お年寄りの笑顔を思い出すと、いい加減なものは作れないというか。
将来「この道があってよかった」と言ってくれる人を思い浮かべながら作業しています。

あとですね、これだけ長く続けていて、作業自体も安全とは言いがたいものなのに、一度も大きな怪我をしたことがないんですよ。
やっぱり鎮守の森だから・・・神様のおかげかなと思い、感謝しながら作っています。

■心に残ったエピソードを・・・

3年くらい前から、僕が作業しているバリアフリーの道を歩いている人がいるんです。
その方は心臓が悪く、お医者さんからウォーキングを進められていたらしいんですが、山道は心臓に負担がかかるし、普通の道は排気ガスが・・・というわけで、なかなか実現できなかったんですね。
それで、たまたまこの道を聞いて来られたところ、傾斜が優しく森林浴もできるので、毎日ウォーキングされるようになって。
そうしたら、だんだんと顔色が良くなって話し方までハキハキしてきて、元気になられたんですよ!
嬉しいですよね!
たまたまその方は製材業を営んでいて「元気になったお礼に」と、道を構築する丸太用の木を、1000本くらい寄贈下さったんです。
出会いというか・・・人の縁みたいなものを感じた出来事でした。

他にもいろいろな方が資金面や物資面の協力をしてくださっていて、本当に感謝しています!

■『人と森林との豊かなかかわり』について・・・

バリアフリーの遊歩道は、傾斜が緩やかで、車椅子から手を離しても転がらないくらいが理想です。
幅も、車椅子同士がすれ違える1.5メートルくらい。
そんな知識はあっても、土木技術は専門ではないので、最初は台風のたびにどこかが崩れていました。
「これで良いだろう」と思ったところは、必ず崩れるんです。

今思うと、始めた当初は「自然と人間」を分けていたと思います。
『自然と調和』を掲げていたはずなのに、どこがで自然に対する挑戦というか、自然を変えようとしていました。
それでようやくわかったのが、『崩れるということは、自然と調和していない』ということ。
自然が「これでいいよ」と言ったところは、何年経っても崩れないんです。

自分が森の一部となって、自然と調和することで、正しい道作りを続けていきたいですね。